ほかの繰り手と合流したのと同じくして、コログの森からまばゆい光が放たれた。
あの騎士が……リンクが、退魔の剣を手にしたことがわかった。
これまで主役を勝ち取ってきた自分が脇役など到底考えられない。
しかし、この大舞台においては、その剣を手にした者こそが厄災討伐の要。
いくら他の追随を許さんばかりに鍛錬や成果を積み上げようとも、
族内でほかの誰も扱うことができない弓を難なく使いこなしたとしても、その剣を前にして主役には成りえない。
悔しくないかと言われたら、嘘になる。もし退魔の武器が剣ではなく弓だったら。
……なんて虚構に走るようではいよいよもってただの負け惜しみになってしまう。
“メドーにとっての要は、リーバル”
“与えられた使命にもっと誇りを持って、まっとうしてほしい”
小生意気な彼女の言葉が、醜悪な感情にまみれた僕の心に優しくよみがえった。
そうだ……僕には僕の成すべきことが、僕にしか成し得ない責務があるのだ。
ーーーーーーーーーー
コログの森にたどり着くと、リンクが姫をかばいながら黒づくめの男と対峙していた。
その手には、やはり退魔の剣が握られていた。
しかしそれを目にした途端、それまで感じていた苛立ちとは別に、安堵感のようなものが芽生えた自分に驚く。
男が手にする円球は森のなかを汚していた赤黒いヘドロのようなものを生み出し、僕らと瓜二つの幻影を形成した。
まるで僕の影を立体化させたようなそれは、あまりに酷似していて気味が悪いなんてものじゃない。
影の分際で動きまで真似してくるなんて、馬鹿にするにも程がある。
おかげでこいつと対峙しているあいだだけはリンクが退魔の剣を手にしたことなど
ささやかなことだと流せるくらいの余裕はあったように思う。
幻影との戦いの最中、姫を背に庇う楽士の姿が目に留まった。
男のフードに阻まれ口元はよく見えなかったが、何かを吹き込まれているのは明らかだった。
毅然とした顔がみるみる青ざめていくさまに、彼女の細い腕を掴む男の手に、言いようのない怒りが沸き立った。
なぜ自分でもそう感じたのかわからない。仲間として信頼を置き始めているせいだろうか。
男が撤退したあと、ダルケルに押しつぶされるようにして抱きしめられる彼女の姿に、
僕を見つめる慈愛に満ちた眼差しに、特別な何かを感じた。
(2021.6.10)