リーバルの日記

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各神獣を取り戻したことにより、戦況は大きく覆った。
100年後の世界から転移してきたというテバの力が影響しているのか、メドーの出力が上がったことが大きい。
その恩恵も助け、地上や上空に蔓延していたおびただしい数のガーディアンも容易に片付いた。

彼女は先のカースガノンとの戦いで笛を失ったが、代わりに歌声の力を頼りに戦ってくれている。
僕の命を救ったときに無我夢中で力を発動させたことがきっかけとなり、媒介なくして力を発動させられるようになったのではないかと本人は言う。
戦闘慣れしているわけでもないのに無数の飛行型ガーディアンをひとまとめに倒したのには正直驚かされた。

驚きはそればかりじゃない。
ついに姫が封印の力に目覚めたそうだ。リンクの窮地を目の当たりにしたことが引き金になったのだそうだ。やれやれだが、これでようやく封印の段取りが整ったというわけだ。
そして、散々僕らの行く手を阻み続けたイーガ団がこちらに寝返ったらしい。
聞くところによると、例の占い師が手のひらを返したことが離背の原因だという。団員たちを大勢ガノンの供儀に捧げたのだとか。端から利用するために近づいたのだろう。元々敵だった奴らに同情心なんて湧きはしないが、奴らなりの義理や仲間意識は多少なりとも感じていた。僕も同胞を同じように失うことを思えば、まあ……少しは気持ちがわからないでもない。

その奴らと姫が手を取り合い、はじまりの台地の奪還作戦に赴いていると聞きつけ駆け付けたが、すでに戦いを終えた後だった。
はじまりの台地に着くとまず驚いたのが、崩御したと報じられていたはずのハイラル王が生きていたことだ。
王と姫の無事を喜ぶ彼女に、つい気が緩みそうになった。
勘ぐるように肩眉を上げるハイラル王に、そんなお茶目な一面があったのかと驚いたが、そんな僕に次いで穏やかに微笑みかけてきた。気まずさに耐え切れずさっさと神殿に退散した。

神殿内に鎮座する女神像を見上げていると、何だか嘘をつけない気になって、つい、本音がこぼれた。
だが、本音とは裏腹に脳に浮かんだとおりの想いは紡げず、遠回しな言い方ばかりしてしまった。
それでも彼女には届いたらしく、素直になりきれない僕の言葉に冗談交じりに返された。

メドーでの活躍を労ってやろうと思い立ち願いを聞けば、僕が瀕死の状態で彼女に告げた言葉をもう一度聞きたいと言われた。
あんなこっぱずかしいことを面と向かって言えなどと言うのではぐらかしてやろうと思ったが、彼女があまりに必死なのがいじらしくて、叶えてあげる気になった。

一度決断した以上、もう後には引けない。
今度こそ、スムーズに本音を打ち明けることができた。

褒美ついでに、ゲルドの街で買った女神像のお守りを彼女に贈った。
ありふれた石の彫像だが、目に涙を浮かべて喜ぶ彼女に、胸の奥がほのかに温かくなった。

「大切にします」だなんて言うもんだからどきりとしたが、彫像のことだろう。まったく、紛らわしいことを。

(2021.11.13)

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