リーバルの日記

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村の者たちに事情を説明しあとのことを任せ、ハイラル王国に到着したときにはすでに夕刻を迎えていた。
ハイラル王と謁見した。一国の王たる厳格な風格の人物だ。お堅いのはあの顔立ちだけではないのは一目でわかった。

迎撃の一件について咎められるものと身構えていたが、
あの姫君は要所要所事情を伏せているらしく、長旅の労をねぎらわれ、村の様子を聞かれただけだった。
不信感を抱かれるくらいなら、余計なことは伏せておくのが得策、というわけか。まあ、そのほうがこちらとしても都合がいい。
下手に口を滑らせなくて良かった。

謁見の後、姫から例の女ーー楽士ーーの能力について耳にした。
聞けば、彼女は元々ただの町娘で、町中で演奏していたのをたまたま姫が見つけ、偶然その能力を見出したのだとか。
つまり、彼女の能力は長年積み上げたものではなく、付け焼刃、というわけだ。
演奏に関しては、まあ、それなりに練習してきたことはうかがえる。
しかし、戦闘の訓練を受けたわけでもなければ実戦の経験もないような奴を側に置こうという姫の神経がさっぱり理解できない。
ただでさえこれから忙しくなるってのに、何で僕らがあんなか弱い人間のお守りまでしなきゃいけないんだ。

苛立ちを募らせながら城内を探索していたとき、庭園で楽士の姿を見つけた。
髪をなびかせながら夕映えに感銘を受ける姿につい見とれそうになるが、
呑気な笑顔に怒りが沸き立ち、からかい交じりについ見下げるような言葉を投げつけてしまった。
飛行訓練場のときと同じ真っすぐな視線を向けられるものと予想したが、僕に送られたのは平手打ちだった。
女の一撃などと甘く見ていたが、結構効いた。

僕を見据えるその眼差しは、熟したイチゴのように脆く、彼女の弱さを映しているように見えた。

(2021.6.7)

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