リーバルの日記

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各地の塔の起動は滞りなく完了し、残すところ北東の果てアッカレ砦のみとなった。
行く先々で攻撃を受けることはあったが、それにしては敵数が少ない。イーガ団は各地で遭遇するものの、奇天烈な技を使う大柄な剣客の姿は見かけない。森での襲撃以来、例の占い師も行方をくらましている。
ダルケルは順風満帆だとか呑気なことを言っていたが、どこかうまくいきすぎているような気がしてならなかった。

僕の読み通り、敵は手ぐすねを引いて待っていた。
砦は例の剣客統率のもとすでにイーガ団に占拠されたあとで、駆け付けるなり一斉にかかってきた。

敵が多すぎるうえに、一人ひとりが狡猾な戦術を用いる。
僕一人なら敵じゃないが、戦い慣れしていない彼女をこの乱闘に巻き込むのは、たとえ戦い慣れしている兵士をそばにつけていても危険すぎる。
僕もずっと目を離さずにいてやれるわけじゃない。

敵の目をかいくぐり、彼女を塔の上部の部屋に避難させた。
そこからなら敵に狙われる可能性も低いだろうし、僕も見張ってあげられる。

けれど、あの占い師は僕の手の内を読んでいた。どこで見ていたのやら、僕の目を盗んで彼女に接触していた。
間一髪のところで命を救うことはできたが、あいつに汚されたあとだった。
泣き崩れる彼女の首筋に小さなあざを見つけた。リトの僕には、彼女の身に刻むことなど到底不可能な”印”。
まるであの男が見せつけるように残していったその跡は、彼女の身を汚し続け、彼女が涙の一滴を流すたびに僕の心を蝕んだ。

慰めるべきは僕のほうなのに、”ごめんなさい”とつぶやく悲痛な声に、ただただ抱きしめてあげることしかできなかった。

(2021.9.16)

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