リーバルの日記

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今日に限って夜間の火の番だった。
正直さっさと眠ってしまいたいほど気疲れしていたが、見張りも任務の一環だと割り切るしかなかった。

こんな日こそダルケルのように明朗快活なやつととともにしたかったが、よりによって同じく当番にあてがわれたのはリンク。
彼にしてはめずらしく”お疲れ様”などと声をかけてきた。
“君も”と返すと、微かにだがリンクが笑みを浮かべたように見えた。本当に疲れているのかもしれない。

だが、様子がおかしいのはどうやら彼のほうだった。
やたらとこちらを気にする素振りを見せるので何だと聞くと、迷うような間があったあと彼は”あの子のことをどう思っているのか”と尋ねてきた。
ウルボザにしろこいつにしろ、僕と彼女のあいだを引っ掻き回して楽しいのだろうか。
“さあね”と濁し、クムの秘湯に行くと告げキャンプを抜けた。

秘湯の滝で軽く汗を流し、岩場で一休みしていると、だんだんウトウトしてきて、気づいたら眠りこけていた。
あの子と二人で大きな桜の木を眺める夢を見た。
デクの樹かと思ったが、それよりもずっと小さい木だ。
遠くにリトの奇岩が見える高台。位置的に中央ハイラルだろうか。

夢だというのにここまではっきりと景色を覚えているなんて。ましてや彼女と訪れたことがあるわけでもないのに。
僕と彼女は互いの顔を見合わせると、どちらからともなく、キスをした。
夕刻のあの一件がこんな妄想を見させているのだな、と夢のなかの僕はやけに冷静だったが、それにしてはくちばしに触れる感触があまりに鮮明で。
吹きかかる生暖かい吐息に、これは夢なのか?と目の前のできごとに疑いを向け始めたとき、意識が浮上した。

柔らかな感触がくちばしの端から離れていくのを目で追った僕は、一気に目が覚めた。
あの子が、となりにいたのだ。

彼女は僕と目が合うと途端に顔を真っ赤にした。
何か言いたげに口を動かしていたが、言葉を失ったように声を発そうとしないまま、涙ぐんで去ってしまった。

僕が湯冷めしないようにだろう、自分が冷えるのも構わずわざわざトーガなんて残していって。
僕の気も確かめようともせず、キスなんてして。

身勝手にも程がある。こんなの気持ちの押し付けだ。なのに……。
愚かにも、嬉しい、と思ってしまう自分がいる。

できるものなら彼女の腕を引いて、もう一度キスしたかった。あの夢のように。
そうでなくとも、せめて追いかけていって、きつく抱きしめてやりたかった。

けど、……もし本当にそうしてしまっていたなら?その先はどうなる?

やはり、これ以上深入りしてはだめだ。
女一人にここまで煩悶とさせられるなんて、一戦士としてあるまじきことだ。
明日から気持ちを入れ替えないと。

そうしないといけないとわかっているのに、どんなに振り払っても頭のなかにはただ一つの感情が浮かんでくる。

(2021.7.15)

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