まぶたにまばゆい刺激を感じ、薄く目を開ける。
ぼんやりする目をこすりながら、あたりを見渡すと、私が横になっているところとは反対側の壁に腕組みをしてもたれているリーバルがいた。
そうか、しばらくリーバルのお家で厄介になるんだっけ……。
見慣れた馬宿のベッドではなく、木の床に薄く敷かれたわらにかぶせられてある絨毯の上に寝そべっていることで現状を思い出す。
昨晩はリーバルがくれた毛布とベストのおかげで凍えずにぐっすり眠れた。
上体を起こすと、外気が毛布のなかに入ってきて、たちまち体が冷える。
「さむ……」と底冷えする体をさすりながら、毛布を羽織り、リーバルのそばにそろっと近づく。
声をかけようかと手を伸ばすが、彼の寝姿から目が離せず、食い入るように見つめてしまう。
紺色の羽毛に覆われた鳥とヒトが合わさったような容姿。
あぐらの片膝を立てて腕組みをする様は、ヒトに近いものを感じる。
赤く縁どられたまぶた。凛々しい黄色の眉。それと同色のくちばし……。
多彩な色合いだけれど、決して派手ではなく、むしろ調和してさえ見える。
ふと彼の背後に目をやると、三つ編みに結われていた襟足が下ろされ、彼の肩にかかっているのに気づいた。
何というか……艶っぽいな……。
「……男の寝込みにつけ込むなんていい度胸だね、君」
「わっ!!」
突然声をかけられたことで意表を突かれた私は、後ろにひっくり返ってしまった。
「同じことをされても文句は言わせないよ?」
リーバルは片目を開けて流し目でこちらを見やり、口角を上げる。
「それとも……」
倒れたままの私に覆いかぶさるようににじり寄られ、あごをくい、と持ち上げられた。
「僕にキスでもしようとした、とか……」
こんな状況でそんなことを恥ずかしげもなくさらっと言われ、心臓が早鐘を打つ。
「違っ……えっと、お、起こそうとしただけだよ!」
「……ぷっ」
リーバルは噴き出した。
うろたえる私の様子がそんなにおかしいのか、額を手で押さえながらお腹を抱えて笑っている。
「はあー……君ってホントにからかい甲斐があるよね!
リトが人間に手を出すなんてあるわけないじゃないか」
その言葉に、なぜか胸が締め付けられる。
「そう……だよね。
ああ、もう!びっくりしたあ……。いきなりあんなことするんだもん」
「君だって僕の寝顔に見とれてただろ。
あんまりじっと見つめられるから顔に穴が開くかと思ったよ」
顔から火を噴くんじゃないかと思うほどに上気した頬を冷まそうと冷たい両手を押し付ける。
ああ、穴があったら入りたい……。
そんな私の心とは裏腹に、リーバルは棚に置かれた髪留めを手にすると、襟足を少しずつ束ねながら三つ編みを作っていく。
人間と違って数倍も大きなリトの手で、あんな細かい作業ができるものなのか。
頭の隅でそんなことを思ったが、先ほどの一件が私の頭を占めており、まだ気持ちが追い付いていない。
「い、いつから起きてたの……?」
「君が僕のとなりに来たときにはもう起きてたさ。
ずっと薄目で見てたけど、なかなか寝たふりに気づかなくて笑いをこらえるのに必死だったよ」
四本目の三つ編みに髪留めを通し終えると、リーバルはニヒルな笑みを浮かべながらこちらを振り返った。
「さて、冗談はここまでにして、さっさと身支度しなよ。
調理場に大きな桶があるから、それに水を張って顔でも洗ってくれば」
リーバルは先ほどとは打って変わって柔和な笑みを浮かべ、タオルを差し出してきた。
彼にいたずらを試みようものなら、数倍にして返されると学んだ朝だった。
(2021.2.14)