宙にたゆたう

14. その鷲、国王と謁見する(夢主視点)

英傑が集結したことにより、城と城下の魔物は瞬く間に一掃され、ようやくハイラルの再建が再開した。

今回の襲来を受け、当面の町への出入りが正門のみに絞られたことにより、兵や大工たちもようやく本来の業務に戻ることができるようになったという。
まだ警戒を解くことは難しいが、ようやく平穏に一歩近づいたというところだろう。

事態が収束を迎え、皆戦いの疲れを癒していたころ、城内の英傑・全兵が謁見の間に集められた。
私は部屋で待たせてもらうべきかと思ったが、ゼルダが参列するようにと念を押すので、兵士たちの最後尾に立たせてもらうことにした。

玉座の前で背を向けて沈黙していた王は、全員が集まったタイミングで、こちらを振り向き、声を上げた。

「先の戦にて多くの兵を失ったことにより、こたびの襲撃で皆には多大な負担がかかったことだろう。
だが、少ない兵力ながら度重なる襲来に迅速に対応し、見事撃退に成功した。
まずは、その功を労いたい。皆、よくぞ無事であったな」

謁見の間はしんと静まり返っているが、王の寛大な言葉に皆が胸を打たれていることは誰の目を見ても明らかだった。
私も皆の目に浮かぶ喜びに胸が熱くなる。

「そして、英傑たちよ。
再びハイラル城に集結してくれたこと、深く感謝する」

英傑や兵たちが跪いたので、私もそれに倣う。

「今ひとたび、ハイラルに真の安寧を」

謁見を終え、私は英傑やゼルダとともに庭園のガゼボに集まった。

すっかり日が暮れてしまったが、ガゼボの床に灯されたろうそくの炎や遠くに見える城下町の灯りが、薄暗闇を幻想的に照らしている。

「皆、集結早々の襲撃にもかかわらず、すぐさま対処にあたってくれたこと、本当に感謝しています。
アイも、病み上がりなのに手を貸してくれたそうですね」

「いえ!
私は、皆さんに比べるとお力になれていたか……」

「あんた、なかなかのもんだったよ!
聞けば、まだ弓を扱い始めたばかりだというじゃないか。
それなのに敵の急所をバシバシ射抜いてたって兵のあいだじゃ持ち切りなんだよ」

「バシバシって……」

ウルボザと名乗るこの高身長な女性は、ゼルダ様の幼少期からのお知り合いだという。
幼くして母親と死に別れた彼女にとって、母親代わりの存在なのだろう。

色香があり同じ女性から見ても非常に魅力的だが、それだけではない懐の深さや愛情深さがうかがい知れる。

「そりゃあそうだろうよ。
なんせ、この僕が直々に弓の指導をしてあげたんだからね。
うまくならないわけがないさ」

「へえ!自分を高めることにしか興味がなさそうなあんたがねえ」

「……どういう意味だよ?」

露骨に眉をひそめたリーバルに、ゼルダやダルケルが声を潜めて笑う。
終始無言のリンクは、二人の様子を横目に見やりながらも、ちょっと眉が上がっているところを見ると、おもしろがっている……のかもしれない。

「まあまあ、二人とも」

涼しい顔をしたままのウルボザにリーバルが一方的に火花を散らしているところ、英傑のなかで一際小さな少女が苦笑を浮かべながら仲裁に入る。

アイさん、初めまして、だよね。
私は、ミファー。ゾーラの里の姫です」

紅が引かれた小さな口が弧を描き、うるんだ大きな目元が細められる。
そのあでやかさにドキッとする。

「わ、よろしくお願いします……!ミファー様」

「そんなかしこまらないで。
仲良くしてくれると嬉しいな」

ゼルダと同様、王族のミファーも淑やかな雰囲気だが、よりあどけなくフレンドリーな印象だ。
おっとりとした話しぶりに安心感が生まれる。

「んでよ、リーバル。
おめえさん、この嬢ちゃんとはどういう関係なんだ?
一匹狼のおめえさんにしちゃ、えらく目をかけてるように見えるが」

ゴロン族の英傑・ダルケルが、突然私をのぞき込むようにして身をかがめたので、急なドアップに思わず変な声を上げて仰け反る。

ぼふん、と背中に柔らかな感触があたり、振り返る。
私の後ろでやり取りを黙って見ていたリーバルと目が合い、私の顔は一気に熱を帯びた。

アイと僕の関係、ねえ……さあ、何だと思う?」

「ええっ!?」

適当にはぐらかされると思っていた私は、リーバルが予想外の解答とともに不敵な笑みを浮かべて見下ろしてくるので、素っ頓狂な声を上げて彼を凝視した。
私の様子にクスクスと笑いながら、リーバルは英傑たちを見まわし、堂々と言ってのけた。

「……僕は、好きだよ。アイのこと」

その何気ない表明に、リーバルを除きガゼボにいた全員の驚嘆の叫びが夜の庭園にこだました。

(2021.3.1)

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