イーガ団により占拠されていたアッカレ砦を奪還したことにより、最後の塔アッカレの塔の起動に成功。ついにシーカータワー全機の復旧が完了した。
長きにわたってハイラル中を巡る旅もこれで最後というわけだ。
引き続き戦況によっては各地に向かうことにはなるだろうが、今後の古代遺物研究所の活躍次第で大規模なワープが可能になるという話を耳にしている。
目的地までの移動時間が短縮できるだけでなく道中敵との遭遇も避けられることにより、移動の苦労は大幅に減ることになるだろう。
北東の果てからハイラル城まで遠路はるばる戻ってきた僕たちにはしばしの休息が与えられた。
久方ぶりの自室に戻り、設えられたハンモックに飛び乗ると、ゆったりとした揺れ心地に意識が沈みそうになった。
かぶりを振っても眠気が吹き飛ばず、少し風に当たることにした。
今行けば彼女に会えるかもしれないなどと浮かぶが、逢瀬のために与えられた休息ではないのだ。
そう言い聞かせたはずが、風呂上がりらしく薄着で半乾きの髪をなびかせる彼女を前にして、平静を保つのは思いの外厳しく、タガが外れる前に退散した。
自室に戻りようやく冷静さを取り戻したところで、同種でもないのにひどく興奮している自分に驚いた。
ハイラルの出身ではないにしても人間という括りでは同じと言っていい姫やインパには何の感情も抱かない僕が、なぜか彼女には心をかき乱されてしまう。
異性として魅力的なことを認めたとしても、それだけでは説明のつけようがない違和感が残る。
追記:
憶測通り、彼女はハイラルの人間ではなかった。
無理に聞き出すつもりなどなく、少しからかうつもりで問い詰めるような言い方をしてしまったのが悪かったかもしれない。
しかし、僕が無理やり問い正したことを抜きにしても彼女自身誰かに打ち明けたい思いがあったのだろう。
涙をこぼしながらひた隠しにしてきた自身について語る姿に、ようやく彼女のことを少し知れたようで、言いにくいことを言わせて申し訳ないとは思いつつ、悪い気はしなかった。
(2021.11.9)