「アイは回らないのですか?」
「リーバルを待ちます。合流したら追いかけますので、皆さんは先に回ってください」
ゼルダは、わかりました、と頷くと、インパとリンクを引き連れ村のなかへと入っていった。
岩壁にもたれて小滝の流れる音に耳を傾け、門の垂れ幕がはためくのを見つめながら待つこと小一時間。
頭上に影がさし、月が隠れたのかと見上げたとき。バサッと大きな羽音とともに待ちわびた人が舞い降りてきた。
本当に来てくれたことが嬉しくてつい勢いよく壁から身を起こしてしまい、心中を気取られぬよう咳ばらいをして「遅くまでおつかれさまです」と誤魔化した。
驚いたように目を丸くしたリーバルは、村へと続く道と私を交互に見たあと、怪訝そうに眉を潜めた。
「ずっと待ってたのかい?」
「ええ、まあ……」
待っていた理由を尋ねられるのではと思うとどうもいい答えが浮かばず、歯切れ悪くそう返してしまった。
しかしリーバルはそれ以上追求してくる風でもなく、ふうん……とあごに片翼を添えて私を横目に見下ろすと、じゃあ行こうか、と先導し始めた。
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村に入ってすぐのところで辺りを見渡していたリーバルは、人ごみのなかざっと見る限りではゼルダたちを見つけられなかったらしく、両翼を掲げて首を振った。
「小さい村だし探せばすぐ見つかるんだろうけど、この人ごみのなか大勢でつるんで歩くのもなんだろ。
どうせならさ、このままふたりで回るってのはどうだい?」
昨晩リーバルにデートのお誘いかとからかわれたことがよぎって気恥ずかしくなるも、人の多さを思うと彼とふたりでもいいかと思えてくる。
それに、ふたりで回るかと聞かれたとき、なんだか特別扱いされたような気になって少し嬉しいと感じてしまった。
「……リーバルがそれでいいのなら」
そう答えると、リーバルは何故かほっとしたような表情を浮かべて小さく息を漏らした。
「それじゃ、まず手始めにどこに行きたい?待たせたお詫びに最初は君に決めさせてあげる」
「えっと、じゃあ……」
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