記念文

ホタル舞う夜の約束

昨日の夕方、任務のあとみんながカカリコに向かうなか、私はリバーサイド馬宿を経由して城に帰還した。
祭りについて行かなかったことを後悔していないと言えば嘘になる。
たくさんのホタルが闇夜に舞うのをぜひ見てみたかったし、露店を回ってみたかった。
けれど、間の悪いことに祭りの翌日は久々の非番。野宿が続き疲労がたまっていたこともあり、つい自室でゆっくり休みたい気持ちが勝ってしまったのだ。

帰還中、別任務にあたっていたダルケルとミファーが、一人では危ないからと遠回りになるリバーサイド馬宿までわざわざ迎えに来てくれて帰路を共にした。
道中ふたりにインパから聞いたお祭りの話をすると、都合が合えば自分たちもぜひ行きたかったと二人は顔を見合わせてため息をこぼしていたのが何だか微笑ましかった。

翌日。
部屋でハテール地方での任務の報告書を書いていたところに、帰還したばかりのゼルダが私の部屋を訪ねてきた。
後ろ手に隠し持っていた細長い包みをいたずらな笑みとともに差し出しこう言った。

「リーバルから預かったおみやげです。あなたに渡してほしいと頼まれました」

「えっ……彼もお祭りに?」

「ええ。遅れて合流しました」

昨日リーバルは別の任務にあたるとのことで早朝早くにキャンプをあとにしたし、彼の性格からしててっきりお祭りには参加していないものだと思っていた。
何だろう。ほんの少しだけ、残念に思う自分がいる。
にこやかに部屋をあとにしたゼルダを見送って閉めたドアにもたれ、深くため息を吐き出した。

渡された包みを広げると、六枚羽のかざぐるまが現れた。
かざぐるまの柄に括りつけられた紙を広げると、キレのある字でこう書かれていた。

“祭りの景品だ。僕が持っていても仕方がないし、せっかくだから君にあげる”

直接渡してくれればいいのにゼルダ伝に渡してくるところに彼の恥じらいがうかがい知れて、自信家なくせに意外といじらしい側面もあるのだなと、いつもの仏頂面を思い出しながら思わず笑みが浮かぶ。

「やっぱりお祭りに行っとけば良かった……」

ミファーでもダルケルでもウルボザでもなく、私にこれを渡してきたことに何らかの意味があるように思えてならない。
風もなくゆっくりと回るかざぐるまを見つめ、来年こそは彼を誘って行こうと心に決めたのだった。

 
ノーマルエンド
「おみやげ」 


 

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