記念文

ホタル舞う夜の約束

西ハテール南東・ヒッコリ森林にて。
川沿いの崖下の祠の調査を終えるころにはすでに陽が傾き、双子山をのぞむ高台の空には星屑が散りばめられている。
馬宿までそう遠くはないが、夜も更けてきたためこれからゼルダを連れて宿に向かうには少々危険が伴うと判断し、風穴のあいた岩場を拠点に一晩明かすことにした。

トンネルのなかでリンクが火をおこしてくれているあいだ、インパは山菜採りに、リーバルは周辺で見かけたという魔物や熊の討伐に出かけている。
祠の近くの川辺ですすいだばかりのゼルダの長い髪を布で乾かしながら梳かしていると、彼女の頭上を静かに横切る淡い光に気づいて顔を上げた。
大きな木の幹に腰掛けるゼルダも通り過ぎたばかりの薄明りに気づき、すいっと目で追った。

「シズカホタルだわ……」

その名を思い出そうと思案していたところに、ゼルダが淀みなくその名をつぶやいた。
さすが、日頃より熱心にハイラルの生物について研究されているだけあり物知りだ。

「川が近いからだと思いますが、あちら側の川は少し急流ですからね。まさかこんなところでも目にかかれるとは」

かごいっぱいにキノコや山菜をのせて戻ってきたインパは、自分の肩口をすり抜けていくホタルを見送りながら目元を緩めた。

「インパの故郷のカカリコ村には、多くのホタルが生息しているのですよ」

「そうなのですか!幻想的だろうなあ……」

御髪を整え終えて整髪の道具を片づけながら、ホタルの舞う姿を浮かべてうっとりとする私に、ゼルダは微笑みを浮かべた。

「ホタルと言えば……!」

火で鍋を温めているリンクに山菜のかごを渡したインパは、ふと思い出したように顔を上げると、嬉々とした表情を浮かべて両のこぶしを握った。

「村でちょうど”ホタル祭り”が催されているのです。囃子や露店もあって賑わうんですよ。三晩連日で開催され、今日が二日目、明日が最終日のはずです」

「まあ!素敵ですね。明日は引き続き西ハテールの調査の予定ですし、暮れに皆で立ち寄ってみましょうか」

ゼルダがインパ越しにリンクをのぞき込む。
リンクはまさか自分もお誘いを受けるとは思わなかったのか「えっ」と顔をこわばらせたが、ややあってこくりと頷いた。

アイ様もいかがです?」

たき火に照らされインパの目がキラキラと輝いている。

◆カカリコ村のお祭りに行く?

行く
行かない 


 

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