記念文

ホタル舞う夜の約束

「じゃあ、りんごあめの屋台で」

「はいはい」

リーバルがクスクスと笑うので何だか気恥ずかしくなってくる。
りんごあめなんて、子どもっぽいと思われただろうか。

リーバルは台に刺さる色とりどりのあめをさっと眺めると、そのなかから一つを取り上げルピーを店主に差し出した。
その大きな指先に摘まむようにして持たれたりんごあめは、せいぜい飴玉くらいの大きさに見えてしまって、可愛らしさに思わず笑みがこぼれる。

「何笑ってるのさ。人がせっかく買ってあげたってのに」

「や、あの、馬鹿にしたわけじゃないんです。リーバルが持つとりんごあめが小さく見えるなってふと思っただけで」

正直に理由を述べたあとで、不躾だったかもしれないと後悔が胸をよぎる。
けれど、リーバルはきょとんと目を丸くすると、いたずらっぽい笑みを浮かべて目を細めた。

「ふうん、僕を見てそんなこと考えてたのか。けど……いいのかい?無礼な子には、これ、あげないよ?」

「たっ、ただの冗談ですから!」

「ふふ、わかってるさ。……ほら」

慌てて弁明すると、にやにやとりんごあめを差し出された。
しかし、受け取ろうと手を伸ばしたタイミングですっと下げられてしまう。
むっとして見上げた私は、彼がりんごあめをかじったことで目が点になってしまった。

「うわ、なかの実が酸っぱいよこれ」

ずいっと、押し付けるように差し出された食べかけのあめを今度こそ受け取る。
きょろきょろとあたりを見渡したリーバルは、近くの水場に向かうと柄杓で掬った水で口をすすいだ。

顔をしかめながらいかにりんごが酸っぱいかぶつくさ説く彼のかたわらで耳を傾けながら、かじりかけのりんごあめにそっと唇を押し当てた。

ノーマルエンド
「りんごあめ」


 

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