記念文

ホタル舞う夜の約束

「先ほどインパからうかがったのですが、今カカリコ村でお祭りが催されているそうなんです。
明日の任務のあとみんなで行こうという話になっていて……リーバルもどうですか?」

すると、リーバルは急に立ち止まった。
勘ぐるように細められた目に、やましいことがあるわけでもないのに少し冷や汗が浮く。

「……デートのお誘いのつもり?」

「は……ええっ!?」

思いがけずリーバルの口から”デート”という単語が飛び出し、驚きのあまり間の抜けた声を上げてしまった。
松明の橙に灯されぬらりと煌めく翡翠にじっと見下ろされ、心臓が激しく鼓動を打ち始める。

「あ、あの……その……」

どうこたえて良いかわからず言いあぐねていると、リーバルはおかしそうに笑いながら、なんてね、と両翼を掲げた。

「あいにくだけど、明日は朝から晩まで任務が入ってるんだよね」

「そうなんですか……」

私の心情を察してか、クスクスと笑うリーバル。

「おや?残念そうだな。僕がいないと寂しいのかい?」

我ながら明らかさまに落胆しきった言動だったと気づき、羞恥に顔が熱くなっていく。
私が自覚するよりも早く機微に反応を見せる彼は、相変わらずどこまでも目ざとくて、変にドキドキさせられる。

見透かすような強い眼差し。
初めこそこの目がちょっと苦手だったけれど、あざけるような物言いとは裏腹に周りをよく見通す人だと気づいてからは親しみに変わっていった。
それがいつしか恋心に変わってしまうなんて。

「か、からかわないでください」

頬に浮いた汗を松明の炎のせいにして拭う私に目尻を下げながら、ごめんごめん、と口角を上げるリーバルにポンと頭をなでられた。
頭に残る羽毛の感触に手を重ねながら見上げると、耳元に彼のくちばしが近づいてこそっと耳打ちされる。

「冗談はさておき、祭りは夜なんだろ?間に合えば行ってあげてもいいよ」

再びキャンプに向かって歩き出したリーバルの背を追いながら、緩む口元を押さえつつ、明日のお祭りに想いを馳せ胸を躍らせた。

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夕方には近辺の祠の調査が終わり、双子馬宿で一休みしたあと、ゼルダ、インパ、リンク、そして私の四人でさっそくカカリコ村に向かった。
リーバルには任務のあと一度双子馬宿に立ち寄り、私たちがいなければカカリコ村に来るよう言づけてある。

カカリコ村が近づくと、太鼓や笛などの囃子の音が聞こえてきた。
祭りの帰りらしく、街道には色とりどりの面をつけた子どもや串焼きの魚や肉、酒を手にした人々が思い思いの笑みを浮かべながら足取り軽やかに家路を歩いてゆく。

ゼルダたちはこれから露店を回るそうだが、どうしよう?
リーバルは間に合えば来ると言っていたが、待った方が良いだろうか。

◆リーバルを待つ?

待つ
待たない 


 

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