ご一緒したいと伝えると、ゼルダとインパは喜んだ。
あさっては非番だ。明日は直帰して少しでも長くゆっくりと休みたい気持ちもあるが、年に一度のお祭りとのこと。
このところは働き詰めで遊びに出かける機会はほとんどないに等しい。せっかくなら一日くらい粛々と任をこなすだけの日々を忘れて思いきり楽しみたいものだ。
奥の茂みでがさりと音がして、びくりと肩が跳ねる。
同じく振り返ったゼルダが暗闇に目をこらし、ほっと息をつく。
「リーバルが戻ったようですね。何か携えているように見えるのだけれど」
暗闇でよく見えないが、確かに何か引きずっているように見える。
「私、迎えに行ってきます」
たき火から火をもらい松明を灯すと、こちらに向かってくるリーバルの元へ足早に向かった。
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「リーバル、おつかれさまです」
目をこらし私だとわかったらしく、幾分か表情を和らげると、リーバルはふん、と鼻を鳴らし、私と歩調を合わせた。
「それ、代わりましょうか?」
縄で足を縛られた鹿の亡骸を示すと、彼は顔をしかめた。
「何言ってんの。リト族一番の腕利きが人間の女に重いものを持たせたなんて知れたら、村の恥だよ」
「すみません。けど、近辺の敵を討ち払ってくださったうえに狩りまでされて、さぞお疲れだろうと思って」
縄を肩にかつぎ直しながらちらりと長し目を寄越したリーバルは、ふふん、とせせら笑った。
また何か言われるかと思ったが、それ以上会話が続くことはなく。
そよ風に揺れる木の葉の擦れる音に混ざり、松明の炎が散らす火の粉の弾ける音と草踏み倒す音のみが淡々と静寂を割く。
何か話題はないものかと視線をさまよわせながら思案し、インパの話を思い出す。
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